ショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」を運営するTikTok Japanは、2022年3月24(木)TikTokセーフティパートナーおよび有識者・関係省庁の皆さまにご参加いただき「第12回TikTok Japan セーフティパートナーカウンシル」をオンラインにて開催しました。今回は、「SNSでの子どもの性被害をなくすために」をテーマにプラットフォームができることや対策について、議論しました。
■基調講演
基調講演ではNPO法人ぱっぷす理事長 金尻カズナ氏より「SNSを通じて起こる特に子どもの性被害と対策」について、以下のお話をいただきました。
10代の子どもの性被害はスマホを使用した自画撮り被害によるものが多い。典型的なケースとしてはSNS上でのやりとりで加害者と親密になり、①顔の写った写真を要求→②少し性的な写真を要求→③さらに過激な写真を要求→④断るとSNS上に被害者の顔写真がアップロードされたアカウントが公開される、というもの。被害者が加害者に対し「断ると相手を傷つけるのではないか」という心理を抱くことを利用して加害者の要求に応じさせるケースが多い。また、加害者の傾向としては多数の人にSNSを通じて攻略ゲームのようにアプローチして、リアクションがある相手とやりとりをすすめ、金銭的なメリットを得る場合も多いという。金銭目的でない場合では「互いの同意の上で、犯罪というわけではない」など加害意識がない加害者が多いことが特徴である。性的被害の撲滅にあたっては「被害者」だけではなく「加害者」「傍観者(周囲の第三者)」への働きかけも重要である。
■TikTok「子どもの性被害防止への取り組み」
次に、TikTok Japan 公共政策本部の金子より、TikTokの子どもの性被害防止の取り組みについて、以下のような点を説明しました。
警察庁より公表された「令和3年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」によると、SNS起因被害児童の総数は、1,812人で、昨年の1,819人から、7人減少。TikTok起因の被害児童数は52人(昨年 76人から、24人減少)で、ワーストランキングではTikTokは5位にランクインしたが昨年4位からは改善している。引き続き改善に向けた取り組みを強化していく。
TikTok起因の被害児童数減少の要因については検証中であるがダイレクトメッセージに関する安全機能の実装が進んでいる。2020年4月より16歳未満のダイレクトメッセージ機能の無効化、2021年8月より16歳から17歳のユーザーに対しダイレクトメッセージをデフォルトで「オフ」に設定、2021年9月よりダイレクトメッセージを受け取る相手の選択肢を「友達(相互フォロー)」「オフ」のみに変更し、「誰でも」を削除することで、フォロワー同士でない場合メッセージを送れないよう変更するなどの機能改善があった。
■ディスカッション
ご参加いただいたセーフティパートナーやNPOの皆さま、関係省庁の皆さまを交え、ディスカッションを実施しました。
SNS起因の性被害の防止について、現状の課題・今後の施策の方向性など、多様な意見が出されました。主な論点は以下の3点です。
(写真上から、ストップいじめ!ナビ 須永氏、雫穿大学 朝倉氏、育て上げネット 蟇田氏、ぱっぷす 内田氏、カタリバ 佐渡氏、
OVA 坂本氏、東京自殺防止センター 美濃部氏、安心協 高木氏、ぱっぷす 金尻氏)
<被害が起きる経路とアプリを跨いでのやり取りの実態>
- (ストップいじめ!ナビ 須永氏)TikTokが行っている16歳未満のDM利用禁止機能はかなり有効な施策だと感じる。「クローズドな空間」であるDMでは、オープンなSNSの空間とは心理的にも差があり、被害に通じやすい
- (雫穿大学 朝倉氏)他のSNSで起こりがちなDMを通じての被害は、ことTikTokに関してはあまり聞かない。ただその分、TikTokを始発点に他のSNS/メッセージアプリに遷移していくという抜け道もある。「他の場所に移るのは危険だ」というメッセージをより強く打ち出していってもいい
- (育て上げネット 蟇田氏)(他アプリへの遷移については)映画上映前の撮影禁止の注意のように、より危険な行為だという認識が当たり前になるように、繰り返し同じ内容を注意喚起することも有用かもしれない
- (ぱっぷす 内田氏)あるアプリへの遷移をこちらが断ると複数の代替アプリを提示してくるなど、執拗に他のアプリに遷移させようとする加害者は実際にいる
- (OVA 坂本氏)総じて、SNSが「性被害多発地帯」であることが伝わり切っていない。どこからが被害者なのかもわからないまま犯罪に巻き込まれることもある
<危険なやり取りに対し周囲の人はどのように介入すべきか>
- (日本いのちの電話連盟 ご担当者)身近な人に相談できず、それを飛び越えてインターネット越しの存在に気を許してしまう、という状況が発生していることが問題。見知らぬ人ではなく、安全に相談できる場所があるんだという啓発も必要
- (育て上げネット 蟇田氏)性被害だけでなく思春期に起こる多くの問題が家庭環境に起因しているケースは多い。そのような背景についても目を向けていくことも必要
- (東京自殺防止センター 美濃部氏)インターネット上以外にも相談できる人・場所は存在しているということを示す必要がある。悩む人に寄り添ってあげられることが大切
<TikTokが取り組むべきこと、社会が取り組むべきこと>
- (ストップいじめ!ナビ 須永氏)単一のプラットフォームで取り組んでも限界がある。業界全体を巻き込んでいくイニシアチブが必要で、TikTokにはそのロールモデルとしての役割を期待している
- (ぱっぷす 金尻氏)加害が生じなければ被害も生じない。加害者に対してどういったことをしていくかという点がやはり重要なのではないか
- (育て上げネット 蟇田氏)加害者・傍観者に加え、保護者への啓発も極めて重要。デジタルネイティブ世代の子どもたちが当事者となるケースの中には、彼らが高いネットリテラシーを持つが故に、アプリを使っていることを両親に知られないように操作している例などもある
- (ストップいじめ!ナビ 須永氏)TikTok内の保護者向けページをもう少し充実させることは可能か。家庭で発生する問題にはいくつかのパターンがあるため、それに合わせた記述で情報のディテールを高められるのではないか
本日のディスカッションを通じて明らかとなった対策について議論のみに留まることなく、具体的な対策の検討をすすめ、子どもの性被害防止のための取り組みを推進してまいります。
TikTokは、これからも業界・団体の垣根を越えて皆さまとますます協力・連携し、皆さまに安全に安⼼してTikTokをご利⽤いただけるよう取り組んでまいります。
「第12回TikTok Japan セーフティパートナーカウンシル」開催概要
■日時:2022年3月24日(木)15:00 - 16:30
■開催形式:オンライン
■アジェンダ:
- (1)基調講演:NPO法人ぱっぷす理事長 金尻カズナ氏
- 「SNSでの子どもの性的被害をなくすために」
(2)TikTokより「子どもの性被害防止への取り組み」
(3)ディスカッション
■出席者(順不同/敬称略)
・NPO法人ぱっぷす理事長 金尻カズナ氏
・TikTokセーフティパートナーのみなさま
特定非営利活動法人 国際ビフレンダーズ 東京自殺防止センター
NPO法人ストップいじめ!ナビ
認定特定非営利活動法人育て上げネット
特定非営利活動法人OVA(オーヴァ)
認定NPO法人3keys(スリーキーズ)
TDU・雫穿大学
日本いのちの電話連盟
認定NPO法人カタリバ
・総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 消費者行政第一課/消費者行政第二課
・法務省 人権擁護局