ショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」を運営するTikTok Japanは、9月29日(水)にTikTokセーフティパートナーおよび有識者・関係省庁の皆さまにご参加いただき「第10回TikTok Japan セーフティパートナーカウンシル」をオンラインにて開催しました。今回は、「誹謗中傷の防止」をテーマにプラットフォームができることや対策について、議論しました。

■基調講演

基調講演では国際大学グローバル・コミュニケーション・センター山口真一 准教授より「ネットの誹謗中傷の実態と社会的対処」について、以下のお話をいただきました。

『2020年以降、誹謗中傷に関するニュースが増加しました。これはコロナ禍で情報の受信と発信、双方の時間の増加や社会への不安の解消のために人を攻撃して解消したいという欲求の高まりも要因と考えられています。そもそもインターネットの特性として受動的ではなく能動的な発信に偏るので、目にするものが極端な意見になりやすいという傾向があり、極論が生まれやすく誹謗中傷や炎上が起きやすいということが言えます。

また、詳しく調査すると実は炎上に加担している人は0.0015%(7万人に1人)と全体からみると割合は非常に少なく、ごく一部の人の声が大きくなってしまっているという特徴があげられます。さらに属性でいうと年収が高く、管理職等社会的地位が高い方が加担しているケースも多いということが判明しています。そのような方は、自身の正義感から誹謗中傷を書きこんでいたり、その人の基準で悪いと思うことを𠮟りつけるケース等が多いため、自身が加害意識をもっていないことも多いため難しい問題となっています。

対策は各国取り組んでいますが、インターネット実名性を導入したが、表現の自由の萎縮を招き制度廃止となったケース(韓国)や、プラットフォームに対して違法な投稿を24時間以内に削除する義務を課しているが、過剰削除の危険性が指摘されているケース(ドイツ)などがあります。そのような状況の中、日本では政府の「プラットフォームサービスに関する研究会」において、対策の方向性として①ユーザーに対する情報モラル及びICTリテラシー向上のための啓発活動 ②プラットフォーム事業者の自主的取り組みの支援と透明性・アカウンタビリティの向上 ③発信者情報開示に関する取り組み ④相談対応の充実に向けた連携と体制整備、が挙げられています。②について、プラットフォーム事業者にてすでに実装している機能(Rethink機能等)も多いですが、さらなる取り組みやサービス改善が重要だと考えています。』

■TikTokの安心安全に関する指針及び最新機能アップデートや最近のユーザー傾向について

TikTok公共政策本部 金子陽子、TikTok安全推進チーム 石谷祐真より、TikTokの安心安全に関する指針及び最新機能アップデートの紹介、最近のユーザー傾向について説明しました。最新機能アップデートの紹介では、TikTokの誹謗中傷防止のための機能として、コメント再考機能(Rethink機能)や、フィルターの機能追加、コメントの一括削除機能追加等、最新の機能アップデート等について説明しました。また、誹謗中傷に対するユーザーの傾向として、誹謗中傷コメントをあえてネタにしてポジティブに向き合う動画や、誹謗中傷をテーマとした音源の出現等、ユーザーの皆さまからも誹謗中傷がなくなってほしいと暗示している行動がみられることについて説明しました。

■ディスカッション

ご参加いただいたセーフティパートナーやNPOの皆さま、関係省庁の皆さまを交え、同テーマでディスカッションを実施しました。

その中で、下記のとおり、最近の誹謗中傷の傾向について、セーフティパートナーの皆さまや山口准教授よりお話しいただきました。さらにTikTokをはじめとするプラットフォームが誹謗中傷の対策防止に向け、果たしていく役割や可能性、今後期待することついて様々なご意見をいただきました。特にコメント再考機能(Rethink機能)については皆さまより誹謗中傷の抑止策として可能性を感じる等、有効性について期待するお声を複数いただきました。

<最近の誹謗中傷の傾向>

  • 誹謗中傷の傾向は、流行り廃りもあれば、変わらないところもあり、大きな変化は感じられないが、子供に関しては色々な形で変化している。変化が目まぐるしい中で、そこをどう大人側がキャッチしていくかが問われている。
  • 大人の社会と異なり、子供が見ている世界は狭い。いわゆる炎上とは異なり、同級生や他の学校の同学年の狭いコミュニティで起きている。そのコミュニティの中で、特にヒエラルキーが上の子が言うことに対して、その子に嫌われたくないために肩を持つ傾向がある。たった数人の誹謗中傷であっても、自分のことを嫌っている人がたくさんいると感じてしまう。
  • 誹謗中傷は、大人であろうが子どもであろうが傷つくのは同じで、本人にとってはそれを無視することはできない。そのうえで、小さいコミュニティで起こる「ネットいじめ」と、不特定多数から誹謗中傷浴びせられる「炎上」は、それぞれのメカニズムが違うので新たな研究が必要と考えている。
  • 今の日本社会は疑心暗鬼の中でネット上でコミュニケーションしており、誰もが自分がどう思われるのかを気にしている。また、人生上の重要な決定(進学や就職)を社会が決めた方針に合わせられている「被害者観」が共有され、そこから自身が被害者だからある程度何をしてもいい(=誹謗中傷)と思っている傾向がある。

<誹謗中傷の発信者に対する啓発活動>

  • 誹謗中傷する側が抱える孤立や疑心暗鬼に対する対策が答えになるのではないか。コミュニケーションの想像力をどう育んでいくか、SNS上でどう見られるかではなく、リアルの世界でもサイバーの世界でも自身のアイデンティティをいかに構築していくかが重要だと思う。欧州などで取り組んでいるエンパシー(共感)教育などの要素をSNSにどう持ってくるかがヒントになるのでは。
  • 自身の正義感が誹謗中傷する動機付けとなっている人はなかなか直らないとは思うが、Rethink機能は若い世代に対してかなり有用と思うので、青少年向けのアーキテクチャとして積極的に取り組んだ方がいいのではないか。

<被害者をサポートするセーフティーネットとしての取り組み>

  • 基本的には電話で相談者に寄り添って話を聞く対応が主ではあるが、それぞれの相談者が抱えている問題に対して適した専門機関の紹介はできるので、そのような情報提供は強化していきたい。
  • コロナ禍になってから誹謗中傷に関する相談の数も増えており、相談内容も学校の中で村八分になってるなどの相談も複数あった。相談者に寄り添ってスクールカウンセラーを紹介したり、きちんと悩みや話を聞いてくれる大人が存在していることを伝えている。

<TikTokやSNSプラットフォームに期待すること>

  • アイデアとして、投稿者側のコメント投稿まで、意図的に時間がかかる機能というのもあり得るのではないか。ネットの調子が悪くてコメントできないと投稿を諦めることがあるので、そういう誹謗中傷コメントに対して、少し投稿反映までに時間をかける、一回失敗させるなどの機能を提供することは良いのではないか。
  • Rethink機能のようにアンガーマネジメントを促す方法が若年層には効果的で技術的なアイデアとしても有効だと思う。アンガーマネジメントのように、6秒待てば冷静になるというのは科学的に実証されている。しかし正義感で動いている層にとっては逆効果になる可能性もあるので、そこの対策を考えないといけない。
  • TikTokクリエイター専用の相談窓口を作ることは出来ないか。また誹謗中傷が増えている兆候が機械学習などで見つけられるのであれば、そういう人向けに直接ポップアップ出すなどの機能を検討してほしい。
  • 相談先として紹介される窓口を、より多様にできると良い。被害や相談の属性により、アクセスすべき先が変わってくるので、悩みを抱えている人にマッチするリソースを提供しないと、相談者にとってはどこにアクセスしてよいか不安になる。

本日のディスカッションを通じて明らかとなった対策について議論のみに留まることなく、具体的な対策の検討をすすめ、誹謗中傷防止のための取り組みを推進してまいります。

TikTokは、これからも業界・団体の垣根を越えて皆さまとますます協力・連携し、皆さまに安全に安⼼してTikTokをご利⽤いただけるよう取り組んでまいります。

「第10回TikTok Japan セーフティパートナーカウンシル」開催概要

■日時:2021年9月29日(水)15:00 - 16:30

■開催形式:オンライン

■式次第:

(1)基調講演:国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 山口真一 准教授

「ネットの誹謗中傷の実態と社会的対処」

(2)TikTok 誹謗中傷の取り組み

(3)ディスカッション

■出席者(順不同/敬称略)

・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 山口真一 准教授

・TikTokセーフティパートナーのみなさま

 特定非営利活動法人 国際ビフレンダーズ 東京自殺防止センター

 NPO法人ストップいじめ!ナビ

 認定特定非営利活動法人育て上げネット

 特定非営利活動法人OVA(オーヴァ)

 認定NPO法人3keys(スリーキーズ)

 TDU・雫穿大学

 日本いのちの電話連盟

・総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 消費者行政第一課/消費者行政第二課

・厚生労働省 社会・援護局総務課 自殺対策推進室

・法務省 人権擁護局